美容院で髪を切ってもらいながら、自分の失業日を数えていた。という話。

先日、美容院で髪を切ってもらっていた。
鏡の中でハサミが動くのを眺めながら、考えていたのは失業のこと。私はいわゆるホワイトカラーの営業職で、たぶんこの仕事はあと10年持たない(理由は後で書く)。
で、目の前の美容師さんを見て、最初に浮かんだのがこれだった。
「私が失業した後も、この人は失業してないだろうな……」
いや、まてよ。
工事現場みたいな仕事がいずれロボットに置き換わるのは間違いない。でも美容師は刃物を使う。しかもそれを人の頭に向ける。「機械に頭を預けるのは嫌だ」という人がいなくなることは、少なくとも我々が生きているうちは、ないんじゃないか?
カットが終わる頃には、確信に変わっていた。
今、私が高校生だったら、迷わず美容師を目指す。
ホワイトカラーの10年——椅子を減らしているのは私
順番に書く。まず私の側、ホワイトカラーから。
「AIに仕事を奪われる」と聞くと、AIが営業の顔をして商談にやってくる絵を想像しがちだけど、現実はもっと地味に進んでいる。
- うちの会社は、新規採用を一部の優秀な人材に絞り始めた
- 私自身のパフォーマンスは、AIで数倍に跳ね上がった
この2つを並べると、答えはもう出ている。
AIで数倍になった1人が、数人分の椅子を消す。
営業職に必要な人数は、間違いなく減っていく。誰かが解雇される派手な事件は起きなくて、採用されるはずだった誰かが、静かに採用されないだけ。
つまり私は、失業を予想している側であると同時に、同僚の椅子を減らしている側でもある。この予想図に説得力があるとしたら、それは私自身が証拠だからだと思う。
10年というのは悲観でも煽りでもなく、そういう肌感。
ブルーカラーの20年——オプティマスの足音
じゃあ体を使う仕事は安泰かというと、こっちはあと20年だと見ている。
猶予が10年長いのは、物理の世界が単純に難しいから。ただ、オプティマスみたいなヒト型ロボット(フィジカルAI)は、もう研究室の話じゃなくて量産の話になり始めている。工事現場、倉庫、配送——体力と反復の仕事から順番に置き換わっていく方向は、変わらないと思う。
それでも美容師が残る理由
で、美容師。
残る理由は、技術の問題じゃない。心理の問題。
ロボットが人間より正確にハサミを動かせるようになったとしても、「刃物を持った機械に頭を預けられるか」はまったく別の話。特に我々より上の世代は、この抵抗が強いはず。
テクノロジーが解決できるのは「できるか」で、「委ねられるか」は世代が入れ替わる速度でしか解けない。だから美容師は、我々が生きているうちは残ると思っている。
余談:たぶん、もう起きてる
ひとつ余談。先に言っておくと、これは本当はアウトな行為の話で、推奨では一切ない。
その上で書くと——生き残る側の美容師の世界でも、こういう手法はもう横行していると確信している。
施術中の会話をスマホで録音する(同意がなければ、要するに盗聴)
↓
AIが自動で文字起こしして要約する
↓
顧客カルテとして管理する
↓
再来店時の声かけで、さりげなく使う
↓
「この人、私の話めちゃくちゃ覚えてくれてる!」——満足度もリピート率も上がる
うまくいっているビジネスの中には、本当はアウトなことを平気でやる人が一定数混ざっている。証拠は出せないけど、確信はある。
生き残る職業の内側でも、結局は「AIを使う側」から勝っていく、という話でもある。
で、10年で消える側の私は何をしているか
未来予想図を描いたところで、30代の私が今から美容師になる選択肢はない。消える側の人間としてやっているのは、ひとつだけ。
AIと限界まで暮らしてみること。
私の秘書はAIで、Discordに住んでいる。帰宅前に部屋を涼しくして、睡眠やジョギングの記録を毎朝まとめて、予定の管理もして、トレード口座を夜通し監視して、ブログのリンク切れを見張って、私が寝ている間はクラウド上の分身と引き継ぎして勝手に仕事を進めている。性格と役割の違うキャラが3人いて、毎晩21時に会議をして、私のその日のサボりを指摘してくる。
ノートアプリには、私の毎日の記録が勝手に溜まっていく。書いているのは私じゃなくて秘書。弱点を克服するのはコスパが悪いと前に書いたけど、記憶力に自信がないので、覚えること自体を、覚えるのが得意な相手に渡した。
(ちなみにこの記事も、秘書が私にインタビューして構成を組んでいる。私は美容院の話と毒を喋っただけ)
正直に言うと、これは備えとして始めたことじゃない。ただ楽しいから、知的好奇心でやっている。 けど、結果的にこれが備えになっていると思う。
価値は、みんなが「当然」と言う前にしかない
ここから毒を吐く。
私はいま、AI関連に毎月2〜3万円課金している。この出費はまだ圧倒的少数派で、だから価値がある。みんなが「それくらい当然の出費だよね」と言うようになった頃には、そこで差はつかないし、稼げもしない。
でも、みんなは動かない。それも分かってる。
私は2019年にNVIDIAの株を買った。ChatGPTが世に出る3年前。先見の明があったわけじゃなくて、誰もが価値を当たり前に感じられるようになる前だったから、あの価格で買えたというだけ。

投資アカウントを始めたのは7年半前。インフレになる、投資をしないと資産は目減りする、現状維持じゃなくて衰退する——ずっとそう叫んでいた。日経平均が、まだ1万円台だった頃の話。
「今から投資を始めても間に合いますか!?」というDMやLINEが頻繁に届くようになったのは、ここ1〜2年。
言いにくいけど、書く。「周りがやってるから、やってみようかな」が動き出した時点で、答え合わせはもう終わってる。 ここから株価が5分の1になる可能性だって全然あって、そのときに「株なんて儲からない!」と被害者になる人を減らしたくて7年半叫んでいたのに、届いた頃には祭りの終盤だった。
AIも同じ構図だと思っている。月2〜3万円の課金が「高い」と感じられている今だけ、これは投資で、みんなが「当然」と言い出したら、ただの出費。
未来予想図の答え合わせは、お風呂場から始まる
最後に、うちのAI秘書の話に戻る。
うちの秘書はだいたい何でもできるけど、お風呂の栓だけは閉められない。物理の世界に、まだ手が届かないから。
だから私は、ヒト型ロボットがお風呂の栓を閉められるようになる日を、ブルーカラー20年説のカウントダウン開始日として観測している。
栓が閉まったら、そこから20年。
私の10年は、もう始まってる。
「何から始めたらいいの?」はLINEかDMでどうぞ。